研究概要 |
塩害環境下における鉄筋コンクリート構造物の合理的な耐久設計および適切な耐久性診断を行う為には,コンクリートの設置される場所の塩害負荷指標となる飛来塩分量の値を明確にする事と,コンクリート中への塩化物イオンの浸透過程を明らかにし,鉄筋周りの塩化物イオン量を定量的に把握する必要がある。 本研究は,鉄筋コンクリート構造物の合理的な耐久設計および耐久性診断に資する事を目的として,塩害環境下におけるコンクリート中への塩化物イオンの浸透過程を解明する事に取り組んだ一連の研究成果をまとめたものである。 以下に,本研究において得られた成果を総括する。 1.鉄筋コンクリート構造物の塩害問題に関する歴史的な背景を述べ,外部環境からコンクリートへ浸透する塩化物イオンに起因する塩害については,未だに十分な検討がなされていないことを示した。そして,コンクリート中への塩化物イオンの浸透に関する研究や,塩害環境を決定する最重要因子である飛来塩分量に関する既往の研究の現状について述べ,本研究の目的を明らかにした。 2.塩害環境を決定する最重要因子である飛来塩分量を定量的に把握することを目的として,内陸部への飛来塩分の移流拡散に関して,実験的および解析的に検討を行った。この解析手法より得られた結果と実測結果を比較検討したところ,良好な一致を得た。 3.ニューラルネットワークによる塩化物イオン浸透解析手法を提案し,その適用性について検討した。提案する本解析手法を暴露実験結果と比較したところ,実測値と良く対応した結果が得られた。 本研究で得られた成果は,厳しい塩害環境下における鉄筋コンクリート構造物の耐久設計や維持・管理計画に十分役立つものと考える。
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