研究概要 |
連層鉄骨ブレースを含む鉄筋コンクリート平面骨組を対象として,水平力を正負交番繰り返し載荷する実験を行ない,連層ブレースの挙動が骨組の耐震性能に与える影響を検討した.試験体は実物の約1/4スケールを有する2層3スパンの平面骨組2体で,スパン1000mm,階高800mmとした.柱断面は140mm×140mm,梁断面は140mm×90mm,基礎梁断面は220mm×90mmで共通である.実験変数は連層ブレースを含む骨組の破壊形式であり,基礎の浮き上がり回転(試験体No.1)あるいは引張り側のRC柱の全主筋が引張り降伏する全体曲げ破壊(試験体No.2)を生じる骨組の耐力と変形性能とを調べた.鉄骨ブレースの断面はH-60×60であり,厚さ6mmの鋼板を溶接で組み立てた.鉄骨ブレースに直接溶接したアンカー筋をRC柱・梁に埋め込むことによって鉄骨ブレースとRC躯体とを接合した.コンクリート圧縮強度は30MPaであった.実験では柱の一定圧縮軸力を保持しながら,試験体中央の頭部に正負交番水平力を与えた.四つのフーチングはPC鋼棒によって反力床と緊結した.ただし浮き上がり回転を生じさせる試験体では鉄骨ブレース直下のフーチングを反力床に緊結せず,反力床に別途設置した鋼板とフーチングとのあいだに丸鋼を入れて浮き上がり時の回転中心を明確にするとともに水平反力を取った. 試験体No.1では基礎の浮き上がりが頂部変形角0.2%のときに発生し,変形角0.7%までに境界梁や1層RC柱の脚部の降伏が生じて崩壊形を形成した.頂部変形角1%で最大耐力に到達したのち,境界梁端部および基礎梁端部の曲げ圧縮破壊の進展とともに耐力が徐々に低下した.試験体No.2では頂部変形角0.3%のときにRC側柱の全主筋が引張り降伏し,変形角1%のときに境界梁が曲げ降伏して最大耐力に達した.その後,RC側柱のコンクリート圧壊が顕著に進展するとともに主筋の破断が断続的に発生して耐力が急減した.連層ブレースの浮き上がり回転によって決定された耐力は,境界梁および基礎梁の曲げ戻し効果を考慮した計算法によって評価できた.
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