研究概要 |
本研究は,RC柱およびRC柱梁十字形接合部の2種の部材の力学性状について示している。共通して用いた手法は,組み合わせ応力の相関を考慮したRC部材の解析法であり,一貫した概念の適用となっている。 今回の研究では,十分な精度を持つ変形モデルの提案には至らなかったが,それぞれRC柱部材,RC柱梁十字形接合部部材の力学性状について,いくつかのことが明らかになった。以下にそれらを示す。 <RC柱部材について> 1.シアスパン比,主筋比,軸力の影響を明示したせん断ひび割れ強度評価式を考案した。 2.これまでに提案した,組み合わせ応力の相関を考慮した降伏線理論に基づく解析法により,水平強度および破壊断面角度の予測がほぼ可能である。 3.降伏線理論による強度評価式と部材角に応じ有効係数νを減ずる方式に基づく変形能力評価法では,変形能力の評価精度が既往の方法と同程度となる。 4.降伏線理論による強度評価式と部材角に応じ有効係数νを減ずる方式に基づく変形能力評価法についてはシアスパン比に対する相関がみられた。 <RC柱梁十字形接合部について> 1.めり込み機構に基づくRC造柱梁十字型接合部の強度評価法を提案した。 2.84体の既往試験体の層せん断力の解析によって,提案した解析法の能力を検証したところ,ばらつきは少ないが実験値をやや過大評価する傾向があることがわかった。付着強度の評価法を改善すれば,精度は良くなる見込みがある。 3.接合部が破壊する時,梁のめり込み現象が認められた。そのめり込み量は現行の配筋(pw=0.32%程度)であれば,引張り側のひび割れ幅と同程度になる場合がある。 以上のうち柱梁十字形接合部の研究は,「変形解析モデル」まで至っていないが,今後のモデル構築に有用な知見を得たと考えている。
|