研究概要 |
本研究の目的は,鉄骨躯体が晒される微気候の温・湿度変動,Cl^-,SO_2濃度と等価な海塩相当付着量の数値予測に基づく環境腐食モデルとそれによる耐久性評価法を開発し,その予測精度と適用限界を検討することであり,以下の研究を実施した. 温・湿度変動,海塩相当付着量を劣化外力とした,鋼材の発錆と腐食侵攻を説明する数式モデルを文献調査し,この結果を踏まえて鉄骨建築壁体の耐久性能予測という観点から,妥当な計算精度・効率を有するものを吟味した.この結果,統計モデルではあるが,濡れ時間の代わりに雰囲気の温・湿度,および腐食分子であるCl^-,SO_2の環境濃度を入力として,年間の腐食速度を与える式を利用することとした.なお,腐食後の鋼材の熱物性変化の取り扱いについても検討したが,実用的な整理には至らなかった.また,空気の流れは層流として,多次元鉄骨複合壁体に対する非線形非定常熱・水分・空気同時移動問題のDR境界要素解析法の開発を試みた.また,その妥当性についても部分的にではあるが検証した.また,提案した解析法に関して,長期実測データとの比較を行うことにより,限定的ではあるが,その予測精度を検証した.即ち,アルミ外装を有する通気式外断熱外壁に関する1年間超の長期実測データを用いて,前節までで解説した数値予測法を適用して,実用性の検証を試みた.検討対象は,アルミパネルの外装材を多数のSUS金物で断熱材層(グラスウール)を貫通して支持してある外皮システムであり,この支持金物をアルミ製に交換した場合の熱・湿気特性の違いや防蝕性能の違いについて,実験データを織り交ぜて検討した.
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