研究概要 |
本研究は,自然が失われた都市の中で生物生息環境を回復することを目的とした環境創造政策(たとえば人工なぎさの造成など)を実施すると仮定した場合、この事業に対して人々はどの程度までの費用負担なら許容できるかを、直接面接形式のアンケート調査に基づくCVMによって求める手法を確立することを目的とする。また,「天然の自然を保全する政策」と「人工の自然を創造する政策」の比較評価に基づき,環境創造政策の経済的価値を明らかにする。 アンケート調査は,4か所の天然の干潟(東京湾の三番瀬,伊勢湾の藤前干潟,有明海の諫早湾干潟および荒尾海岸干潟)を保全する場合と,2か所の海域(東京湾および伊勢湾)に人工干潟を造成した場合を想定し,札幌市,仙台市,東京都江戸川区,名古屋市,北九州市,福岡市の6都市の住民,延べ3150名を被験者として実施した。 調査の結果,次のような知見が得られた。(1)天然干潟の保全だけでなく人工なぎさ造成の価値も、当該海域近傍の住民だけでなく、そこから300km遠方の住民からも認識されている。(2)人工なぎさ造成に対する価値認識は、天然干潟の保全の価値に比べて、当該海域からの距離に応じた減衰が顕著である。(3)天然干潟に対する認識と同様に、人工なぎさ造成にも将来世代へ自然環境を残したいという遺産価値として高く評価している。(4)既存の先行事例の存在やその効用を認知している人は、天然干潟とほぼ同等の価値を人工なぎさにも見いだすことができる。
|