研究概要 |
Nb/Ni系,Nb/Pd系,並びにV/Ni系多層膜の界面固相反応に及ぼす真空中焼鈍及び水素中焼鈍の影響について研究した。特に層界面近傍における界面反応過程を詳しく調べるため,本実験では最も単純なシステムである二層薄膜について調べた。アルゴンイオンビームスパッター法によりSi(111)基板上にNb/Ni, Nb/Pd, V/Ni系二層膜試料を室温で作製した。各層の厚さはそれぞれ300nmである。X線回折(XRD)とオージェ分光(AES)深さ分析により設計通りの二層膜が形成され,またその界面が十分急峻であることを確認した。これらの二層膜を真空中にて,200℃〜600℃の温度で0.5〜3時間焼鈍し,二層界面での固相反応過程をXRDとAESで調べた。 真空中焼鈍においては,Nb/Ni系では525℃以上の温度で金属間化合物Ni_3Nbが層界面に形成され,Nb/Pd系では550℃以上でPd_3Nbが形成され成長するのが認められた。さらに,V/Ni係でも同様に550℃以上でNi_3Vが界面に形成され成長した。 一方,5気圧の水素中焼鈍においては,これらの固相反応が促進され,Nb/Ni系では450℃,Nb/Pd系では450℃,V/Niでも450℃という,真空中焼鈍と比べ約100℃も低い温度で反応が開始した。これらの固相反応に先立って,相互拡散による界面近傍の濃度勾配の平坦化も観察された。 このように,水素中焼鈍では上記3合金糸の全てにおいて層間拡散が著しく促進されること,すなわち金属の積層構造が水素によって熱的に不安定化すること,が見出されたが,これはNbやV層中に固溶した多量の水素との相互作用によって,過飽和の超多量原子空孔がNbやV中に誘起され,それを媒介として界面における異種金属原子の相互拡散が著しく促進されることによるものであると結論した。本研究で見出された水素吸蔵による固相界面反応の促進効果は,金属材料の製造及び加工プロセスにおいて有効に利用できる可能性を有している。 以上の研究成果を3編の学術論文として学会誌等に発表した。
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