研究概要 |
室温における磁気冷凍が環境にやさしく省エネルギーの冷凍技術として世界的な注目を集めている.室温磁気冷凍を実現するためには室温で大きな磁気熱量効果を示す材料の開発が不可欠である.本研究では希土類(R)とFeを含む化合物から出発して室温での巨大磁気熱量効果材料の研究を行った.研究成果は以下のとおりである. 1)R_2Fe_<17>は室温付近にキュリー温度を持つFe高濃度化合物である.この系の磁気エントロピー変化ΔS_Mを測定したところ,Pr_2Fe_<17>で磁場5Tのもと最大値6J/K kg(5T)を得た.次に低温で大きな磁気熱量効果を示すGdAl_2とGdNi_2に着目し,これらの化合物に遷移金属元素を置換してキュリー温度を室温まで引き上げることを検討した.その結果,Gd(Al_<0.5>Fe_<0.5>)_2がT_C=270Kをもち,5TでのΔS_Mの最大値は4J/K kg程度であることが判明した.これらの結果は実用材料のGdよりも下回っている.そこで次に一次転移物質の探索を行った. 2)その結果MnAs_<1-x>Sb_xが室温でΔS_M=32J/K kgと極めて大きな磁気熱量効果をもつことを見出した.MnAsのAsをSbで置換すると構造相転移が抑えられ,強磁性から常磁性への磁気転移は二次転移になる.しかしこの二次転移は極めて異常で,磁化の温度変化は急峻であり,T_C以上でメタ磁性的な振る舞いが観測された.その結果,磁気熱量効果も0【less than or equal】x【less than or equal】0.3で非常に大きく,キュリー温度も220K〜317Kで変化させられることがわかった.その他ストイキオメトリーからのずれが磁性に及ぼす影響が大きいことも明らかにした. 2)La(FeSi)_<13>は200K付近で一次転移を示し,大きな磁気熱量効果をもつことが報告されている.このSiをCoで置換するとTCが室温付近まで増大することが最近中国のグループによって報告された.そこでわれわれはLa(Fe_<0.88>Si_<0・12-y>Co_y)_<13>を作製し,その磁性を調べた.その結果この化合物はy【less than or equal】0.05でNaZn_<13>型構造をもち,T_Cはy=0の195Kからy=0.05の260Kまで上昇することを見出した.
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