研究概要 |
本来延性である固体金属にある特定の液体金属を付着させて力を加えると,固体金属は延性を失い,脆性破壊するようになることは,液体金属脆化として知られている.アルミニウムと液体ガリウム,銀と水銀,銅と水銀など,特定の固体金属と液体金属の組み合わせでのみ液体金属脆化は起きる.本研究では,Al, Ag, Cu薄膜を蒸着でつくり,少量のGaまたはHgの粒を表面におき,粒界に浸透する速さを光学顕微鏡で測定した.また,引張試験片に低融点金属を一定時間付着し,除去してから引張試験を行い,最大応力,脆性破面の面積などを調べた.AlとGaの組み合わせでは温度を下げてGaが固体の場合も測定を行った. 少なくとも本研究で対象にした3組の固体金属と低融点金属の組では,力をかけているときに表面に低融点金属があることは本質的ではない.付着させた金属が固体になった場合も含め,試験片に低融点金属を付着している時間が短いと試験片は延性であるが,ある時間以上の付着で試験片は脆化を始める.脆化を起こすまでに潜伏期間が存在し,潜伏期間は低融点金属の粒界への浸透速度の逆数に比例する.このことは,低融点金属(液体である必要はない)が固体金属の粒界に高速浸透し,粒界の強度を下げることで脆化が起きていること,浸透速度が脆化の速さを律速していることを示している. 潜伏期間が存在することや,液体であることよりも浸透速度のほうが効くということは,液体金属脆性の特異性を議論する際に、時間ファクターも含めた議論が必要であることを意味する.
|