研究概要 |
M型やW型の六方晶フェライトが50GHz近傍で磁気共鳴現象を起すことに着目し、TiやMn等でFe^<3+>イオンを置換し共鳴周波数を調整し数GHz帯の磁気共鳴の周波数依存性やEMCを検討してきた。更にこの電波吸収特性の向上の為に、この物質固有の性質を端的に示す単結晶を作製し、吸収特性を左右する複素透磁率μ',μ"及び複素率ε',ε"を高め、1〜数10GHzのマイクロ波帯域で機能する電波吸収体の開発を目的とした。単結晶はBridgman法により竪型の二段加熱電気炉中作製した。六方晶M型フェライトのBaO・6Fe2O3ではBaCO3とα-Fe2O3を所定の比に混合し、ペレット状にし焼成した。これを微粉砕して結晶成長用試料とした。これを白金坩堝に挿入し炉中に白金線にて吊下しm.p以上の1450〜1500℃に1時間保持された。この坩堝は1.0〜3.0cm/hの速度で15cm程度降下させ、融液を凝固させて1250℃で数時間保持した。炉の下端を開放し、水中に自然落下させ急冷した。採取したインゴットはカッターで切断され、その表面は金属光沢を示し、一辺数mmの六角形のセル状に区画され、表面全体はハニカム状の編目を呈していた。個々の六角形のセルは単結晶の様相を示していた。これらのセルを個々に切り出し、X線ラウエ写真により結晶状態を調べた。この板状結晶は六回対称を示す六方晶フェライトの単結晶であった.この試料はc-軸およびc-面に垂直または平行に切り出され、磁気測定に供された。飽和磁化、保磁力は焼結体よりやや高く80emu/g、4k0e程度であった。この試料はトロイダル状に加工され、ネットワークアナライザーで複素透磁率、複素誘電率の測定は1GHz〜20GHzの周波数帯域で測定された。Baフェライトの磁気共鳴周波数は48GHz近傍にあり、この周波数帯ではFe^<3+>イオンをTi, Mn, Zr, Sn等の元素で置換し共鳴周波数を1〜20GHzの帯域に調整する必要がある。まず焼結体で置換元素によるマイクロ波特性への効果を調べた。現在は、元素置換されたフェライトの単結晶の試作中にある。
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