研究概要 |
2種の組成の混合粉体に組成傾斜をつけ,放電プラズマ焼結(SPS)により,広い温度範囲で高い焦電特性を示す材料を製造する方法を開発した。各種条件を幅広く検討し,20℃から50℃の範囲で高い焦電係数を持つ焦電体の製造に成功した。本研究1年目には2つの組成の仮焼体の混合物をSPS法により焼結し2ヶ所の温度にピークを持つ焦電体を作製後拡散処理により同様の特性を持う材料の合成に成功しているが,本方法では粉体の状態で,希望の組成分布を持っているので,異種の組成勾配をもった粉体を混合し,その組成分布を保ったまま焼結する方法へと拡張する糸口を作ったと言える。 欠陥の少ない誘電材料を作るには,高い温度での仮焼条件が必要となり,焼結性の観点からは,低い仮焼条件が必要であった。SPSにおいては,低温条件で焼結するため,仮焼段階において十分反応を進め欠陥を除去する必要があり,焼結性との兼ね合いに問題があった。ここでは高温で仮焼した粉体をナノマイザーを用いて粉砕することにより,高温側壁粉体でも十分な焼結性が得られることを確認した。この結果により,これまでの問題をクリアし,高性能誘電体をつくる糸口となり,今後の研究の方向付けが行われた。 BaNd_2Ti_4O_<12>/Bi_4Ti_3O_<12>/BaNd_2Ti_4O_<12>層状焼結体をSPSを用いて製造することに成功した。この2種の構成成分の正と負の温度特性の組み合わせにより,高性能誘電体となりうる。しかし最適焼結温度が異なるため,層状の焼結体の製造は難しかった。本研究では,予め2枚のBaNd_2Ti_4O_<12>を焼結し,その間にBi_4Ti_3O_<12>の圧粉体を挟み,SPSすることにより,この層状構造を持った焼結体の製造に成功した。 SPSにより優れた焼結体をうるための出発粉体の製造法の開発も行った。本年度は,酸化亜鉛,酸化ニオブなどのナノ粒子を製造することにも成功した。
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