研究概要 |
近年開発されている先進耐熱鋼はマルテンサイト変態によって導入された高密度の転位と微細な亜結晶粒を含んでいる.これらの鋼の優れた高温強度特性の理由は主として下部組織強化と析出強化によるものでる.この下部組織の熱安定性は転位の運動や亜結晶粒界の移動を妨げる析出物の成長速度によって定まる.T91に関する最近の研究は析出粒子の成長速度がクリープ歪に依存することを示唆している.本研究は析出粒子の成長速度がクリープ歪に依存するか否か,どのような機構が起り得るのかを検討するために行った.プロジェクトの期間中に4つの課題,即ち(1)T91に関する既存のデータの解析,(2)析出型Al-Cu合金およびマグネシウム合金に関する実験的検討と解析,(3)溶質雰囲気を持つ転位の運動に関する数値シミュレーションを行った.析出型Al-Cu合金およびマグネシウム合金に関する実験的検討と解析から,析出物の成長速度が歪に依存することが確認できた.溶質雰囲気を持つ転位の運動が溶質の輸送を加速し,析出物の成長速度を促進するという仮定に基づき析出粒子の成長モデルを提案した.このモデルは実験結果を首尾よく説明することができた.
|