研究概要 |
1.強磁性共鳴(FMR)の理論的研究を行った.FMRの理論式は古く知られていて,(1)SmitとBeljerによる厳密解と(2)Kittelによる近似解がある.有名なKittel式に用いる実効的反磁場係数を求める式が,彼の論文では正しくはないということが判明したので,正しい式を導出した.この新しい式によって,薄膜試料について,静磁場を膜面内に印加した次の6つの場合について共鳴式を求めた.それらは,(1)垂直一軸異方性,(2)面内一軸異方性,(3)立方晶(001)面,(4)立方晶(011)面,(5)立方晶(111)面,(6)斜め異方性である. 2.実験としては,スパッタ法による単層膜(NiとCo)と2種類の結晶方位をもつエピタキシャルNiOによる2層膜(Ni/NiOとNiFe/NiO)の研究を行った (1)単層膜Niについて,(1)垂直異方性磁界H_<up>は,30mTorrの高Ar圧側で最も大きく,500Åで3.2kOeである.(2)低Ar圧側では,垂直磁気異方性は小さくなり,面内異方性が大きくなる.(3)残留磁化比M_r/M_sは,30mTorr以上の高Ar圧下で成膜中の印加磁界の平行方向,直角方向とも小さい値となり,面内異方性はみられなくなる. (2)単層膜Coについては,垂直異方性磁場(Hk)は,膜厚の減少伴い増加した. (3)2層膜Ni(500Å)/NiO(2000Å)とNiFe(500Å)/NiO(2000Å)について,(1)交換結合磁界H_<ex>は,NiO(100)面で最も大きく,Ni/NiO(100)で15.3 Oeである.(2)磁気抵抗効果Δρ/ρは,横効果(H⊥I)と縦効果(H//I)で値が大きく異なる.Ni/NiOでは,NiO(110)面で最も大きく,横効果(H⊥I)が0.22%,縦効果(H//I)が0.61%である.NiFe/NiOでは,NiO(100)面で最も大きく,横効果(H⊥I)が0.77%,縦効果(H//I)が0.81%である.
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