研究概要 |
ガスタービン翼用Ni基超合金単結晶の[001]方位は,クリープ特性に優れ,ヤング率が小さいことから低サイクル疲労強度あるいは熱疲労強度にも優れている.このため,動翼の長手方向の主方位は[001]方位から10°以内に制御されている.それに対し,主方位に垂直な2次方位については,現時点では全く制御されていない.そこで,本研究では,単結晶動翼として最もバランスのとれた機械的特性が得られる2次結晶方位を明らかにすることを主たる目的とした.その研究の中で,中低温域のクリープに対しては特異な{111}<112>すべり,引張強度および疲労強度に関しては,{111}<101>すべりの活動に起因する塑性異方性が主要な影響因子であることを明らかにした.また,この研究の過程で,供試合金の基本的特性を調べるため,塑性異方性が最も顕著となる温度域でクリープ試験を行い,5wt%のReを含む第3世代合金TMS75は,Re量が約半分のCMSX4やTMS82+などの第2世代合金に比べ,大きな1次クリープひずみを示しクリープ強度が著しく低いことを明らかにした.この研究結果に興味をもったケンブリッジ大学ロールスロイス研究所のRae博士と共同研究を行った.その結果,この第3世代合金の低温域におけるクリープ強度低下は,2つの積層欠陥対をはさんだ部分転位の運動に起因していること,および,この部分転位の形成にReとCoが複合的に作用していることを世界に先駆けて明らかにした.その特異な強度劣化のメカニズムについて,世界的に著名なガスタービン材料の国際会議において発表した.これらの研究の結果,先進合金は{111}<112>すべりが生じやすく2次結晶方位の影響が大きいため,2次結晶方位を含む結晶方位制御が重要となることを明らかにした.
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