研究概要 |
分割可能なECAP用ダイス(特許取得済み)を作製し,これを用いて超微細結晶銅を作製した.多結晶銅を素材とした場合,1回目のECAP加工により粗大結晶粒内に形成されたサブミクロンサイズのセルが,加工を重ねるごとに微細粒となり,8回の加工で平均粒径約200nmの微細粒(Ultra Fine Grain: UFG)となった. このUFG銅について1kmol/m^3 NaNO_3水溶液中,低ひずみ速度SCC試験(SSRT試験)を行った結果,UFG銅のSCC感受性は実用多結晶銅のそれより極めて低いことが明らかとなった.また,実用多結晶銅では負荷される応力が引張強さの約40〜50%でき裂が発生するのに対し,UFG銅では引張強さ(450MPa)近傍の応力値(約420MPa)に達するまでき裂の発生が認められない.き裂は実用多結晶銅では粒内に発生し,粒内を伝ぱするのに対し,UFG銅では全て粒界に発生,優先的に伝ぱする.さらに,UFG銅に発生したき裂の先端では局所応力集中により再結晶とそれに伴う特定方向の粒成長が認められ,き裂はこの結晶粒界を進展することを明らかにした. 上記水溶液中で塑性ひずみ振幅一定の引張-圧縮疲れ試験を行い,腐食疲れ挙動を検討した.その結果,UFG銅の疲れ寿命は実用多結晶銅のそれより著しく優れており,粗大結晶粒に見られる固執すべり帯(PSB)は形成されない.疲労き裂はSCCの結果と同様,粒界に発生しき裂先端に形成される再結晶に伴う一方向粒成長した結晶粒界に沿って伝ぱし,粒内には全くき裂の発生は認められない. 7種類の軸方位を有する単結晶を用い,ECAP加工中での結晶粒微細過程を検討した.ECAP加工はせん断変形だけの加工であるため,加工によりせん断集合組織が形成される.その方位は{111}<112>,{001}<110>,{112}<110>の3つに限定される.また,ECAP加工により幅約200nmの集合組織が形成され,その後,安定方向への結晶回転に伴うmicrobandが形成されることにより結晶微細化が生じることなどを明らかにした.
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