研究概要 |
1.緒言 近年,精密機械,電子産業等の発展にともない各種機器の小型化,精密化,高性能化が進んでおり,細線の需要増大とその高真直化が望まれている.しかし現状は未だ細線の高真直化の厳しい要請に対して十分対応できていない. 2.実験方法 供試材料はφ0.089mmのりん青銅線C5191を用いた.本研究では素線の形状の影響を知るために,形状の異なる6種類の線材を用いた.真直度は細線長さ15mmあたりのたわみ量Ψ,すなわち2次元曲がり量で判断した.温間矯正とは,対象となる素材に所定の張力を加えて平坦あるいは真直にし,その状態で加熱炉を通過させ,連続的に矯正するプロセスである.実験条件は(1)加熱温度T,(2)加熱時間t,(3)張力Pの3つとし,これらを変動することにより最適な矯正条件を究明した.加熱温度は室温から再結晶温度である300℃を上限とし,矯正条件を設定した. 4.実験結果・考察 曲率半径が大きく,ねじれが無い形状の良い素線を「300℃・10s・50%」の条件で温間引張り矯正した結果,高真直で強度を維持した線材を得ることができた.素線にねじれや曲率半径が小さい形状不良の素線は矯正しても,真直性が劣ることが確認された.形状不良の素線を良好の素線と比較すると,偏径差が大きいことが観察された.逆に素線の形状が不良であっても寸法精度が良好であれば真直性に対する矯正効果は大きい結果を得た. 5.結言 (1)極細線の矯正には温間矯正が有効である.(2)高真直な線材を得るためには曲率が小さく,ねじれの無い素線を選定し,矯正する必要がある.(3)曲率半径が大きく,ねじれが無い素線を「300℃・50%・10s」の条件で矯正した結果,ばらつきが少なく高真直で強度を維持した線材を得ることができた.
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