研究概要 |
固体潤滑剤にh-BNを選び,TiNおよびZrNに対する混合条件とPCPS法による焼結条件を検討した.その結果,TiNあるいはZrNとh-BN(5%)との混合粉末をメカニカル・ミリング(MM)したところ36ks以上で粉末のX線回折パターンからh-BNピークは消失し,h-BN粉が微細化することが明らかとなった.またMMにより遷移金属窒化物粉にh-BN粉を混合する場合,混合割合が5%を超えると焼結が阻害されることがわかった.他方,MM時間は長いほどh-BN粒子の分散性は向上するが,焼結性が低下するので,180ks(50時間)程度が適当であることが明らかになった.そこで,180ksのMMにより5%h-BN粉を混合したTiNあるいはZrN粉末の焼結体では,h-BN粉末は微細に分散し,相対密度,ビッカース硬度ともに単体セラミックの90%以上の値が得られた.さらに,ZrN-hBN焼結体とクロム鋼(SUJ-2)製ボールとの摩擦特性を詳細に調べた.その結果,h-BNを含まないZrN焼結体では摩擦試験開始後すぐに摩擦係数の急激な上昇が見られた.MM粉末から作製したZrN-5%h-BN複合セラミックスは,摩擦摩耗試験で0.2〜0.3の低い摩擦係数を示し,単純混合粉焼結体に比べ2倍以上の長時間潤滑性を示した.固体潤滑剤の効果をさらに実用的レベルで長時間持続させるにはナノオーダー以下にまで微細化・分散化し,強固な複合組織を実現する必要があると考えられる.h-BNを含む表面改質膜として,CrBNを選び,CrBN/CrB複合セラミック膜の摩擦摩耗特性を調べた.多層膜では剥離も無く,摩擦係数はCrB(0.8)およびCrBN(0.2)の中間値である(0.45)であった.CrBN膜構造は,未知の相を含み,主としてCrBおよびh-BNのナノサイズの微細な粒子からなることが明らかになった.
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