研究概要 |
ひけ巣や湯境いなどの鋳造欠陥は,不適切な境界の移動に起因して発生する.そのため,連続体モデルに対して発展してきたオイラー系の数値解析手法である差分法や有限要素法による凝固・湯流れ解析により,鋳造設計を最適化する試みがなされてきた.これらの数値解析手法では,境界の移動を空間に固定した格子を用いて行うため,原理的に扱える移動境界形状には限界があった.そこで本研究では,流れと共に計算代表点が空間を移動していくラグランジュ系の数値解析手法である粒子法を用いた凝固・湯流れ解析手法について基礎的検討を加えた.その結果,以下のような結果を得た. (1)粒子法の基本パラメータである有効粒子半径の値が解析精度に及ぼす影響を明らかにした. (2)粒子間に仮定した相互作用の強さを調節する重み係数の算出方法として,従来用いられてきた積分値を用いる方法は精度が悪く,和による方法が有効であることを明らかにした. (3)粒子法を凝固・伝熱問題に適用する際に必要な熱伝達問題に対する拡張を行った. (4)粒子法により2次元凝固問題を解析してその有効性を検証した結果,差分法では解析精度に問題のあったテーパー付き鋳物の凝固を精度良く解析可能であることが分かった. (5)粒子法により2次元湯流れ問題を解析してその有効性を検証した結果,自由表面の移動を伴う流れ場および固液界面の移動を伴う温度場を精度良く解析可能であることがわかった.
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