研究概要 |
規則配列あるいは秩序分散した粒子集団が示す特異な性質は,高機能材料への応用が期待されているが,その開発には,粒子-粒子間および粒子-基板間相互作用や操作条件などがどのように影響するかを予測可能な動力学的シミュレーション手法が切望される現状にある。本研究では,ナノ粒子動力学と呼ぶべき,メゾスケールコロイド粒子シミュレーション手法の構築を目指し,以下の成果を得た。 1.理論的検討:Langevin方程式を基礎に置き,ブラウン動力学シミュレーション手法を開発した。電解質水溶液中の静電分散安定コロイド粒子系の,反対荷電の基盤への吸着過程を広範にシミュレートし,秩序構造形成過程を解析した。その結果,1)秩序構造を決定づける因子が,これまでに提案されているような相互作用「ポテンシャル」ではなく,我々が「一方向平均力」と名付けた相互作用「力」であることを明らかにし,2)この因子を基礎に,粒子間隔を制御した構造形成が可能であることを示し,さらに,3)構造形成過程が本質的にstochasticな過程であることを明らかにすると共に一方向平均力を基礎にその生成確率を時間に対して推定するモデルの開発に成功した。 2.実験的検討:粒子-基板間に静電引力を与える目的で,サファイア基板とシリカ粒子,および,マイカ基板とカチオン性ポリスチレン粒子の組み合わせで吸着実験を行い,SEMおよびAFMにより観察した。その結果,表面上での粒子吸着構造生成の速度過程を明らかにすると共に,基板上での粒子の移動度が,秩序構造形成に極めて多大な影響を与えることを,シミュレーションと比較しつつ,明らかにした。 以上の検討により,粒子秩序構造形成に関する詳細な情報を得るためのメゾスケール動力学手法の構築に成功するとともに,実験・理論の両面で,構造形成過程の詳細な解析により,種々の重要な過程の工学的モデル化をなし得たと考える。
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