研究概要 |
本研究は,キチンの加水分解による高生理活性キチンオリゴ糖の効率的な生成システムの構築を目的としている。このため,まず自然界に豊富に存在しているキチン加水分解酵素の精製を行う。次に水不溶性であるキチンを,基質として適当な水溶性キチン誘導体に転換する。精製酵素を用いた加水分解反応を解析し,種々のキチンオリゴ糖の生成機構を明らかにする。さらに,動力学的検討を踏まえて,5〜6糖の高生理活性キチンオリゴ糖を得る反応システムを構築することを目的とする。 1.キチン分解酵素の精製 モンシロチョウの蛹をエタノールで殺菌した後,pH5.5の酢酸-酢酸ナトリウム緩衝溶液中で粉砕,濾過し,不純物を取り除いた後に,同緩衝液中で透析し,粗酵素液を得た。これをカラムクロマトグラフィー,限外濾過濃縮,ゲル濾過等の手順により,酵素の精製を行った。酵素の分子量をSDS-PAGEにより推定した。同様の実験をアゲハチョウの蛹についても行った。 2.キチン加水分解の動力学 基質として種々の水溶性キチン誘導体を合成した。モンシロチョウおよびアゲハチョウの蛹由来の精製酵素を用いて加水分解反応を行い,至適pHを求めた。次に至適pHの緩衝液中で基質濃度,酵素濃度,反応温度などの条件を変えて,加水分解反応の反応速度を測定した。,これらの結果に基づいて精製酵素の特性について考察を加えた。一般的なMichaelis-Mentenの酵素反応機構により,実験結果が説明できることを明らかにした。 3.チンオリゴマー生成 N-アセチルグルコサミンモノマーからキチンオリゴマー生成の条件について検討した。モンシロチョウ由来酵素は4〜5糖のオリゴ糖を効率的に生産することが判明したが,アゲハチョウ由来酵素からのオリゴマー生成はモンシロチョウ由来酵素のそれに比べて劣ることがわかった。キチンオリゴマー生成の動力学についても検討したが,定量的な結果を得るまでには至らなかった。
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