研究概要 |
環状アミン類のピロリジン(PRL)は広い用途を持った重要な化合物である。工業的なPRL合成法としては1,4-ジクロリドとアンモニアを原料とする方法が一般的である。しかしこのプロセスは塩素化合物を原料とするため多くの問題を抱えている。そこで本研究では塩素化合物を原料とするのではなく触媒に固体酸触媒を用いた、より経済的・環境負荷的に有利な1,4-ブタンジオール(1,4-BDL)を原料としたPRL合成法について検討した。1,4-BDLからのPRL合成において、中間生成物としてテトラヒドロフラン(THF)が形成される。そのため反応を1,4-BDLからTHFの合成とTHFからPRLの合成に分け、それぞれの合成法を反応条件、反応機構及び触媒特性と反応との関連について詳しく調べ、その後1,4-BDLからのPRL合成を試みた。1,4-BDLの分子内脱水によるTHFの合成には、中程度の酸強度を有する固体酸触媒、特にゼオライト触媒が有用であり、ブレンステッド酸だけでなくルイス酸によっても反応は進行し、温和な条件では副生成物は生成しなかった。またTHFのアミノ化によるPRL合成においては、PRLを高収率で得る最適温度範囲は狭く、弱い酸性質を持つ固体酸触媒の活性が高いことが分かった。1,4-BDLからのPRL合成反応においてはγAl_2O_3が最も活性を示した。さらに本年度はより詳細な分析のために、生成物をオンラインでカラムに導入できるよう装置を改良してTHFからのPRL合成を行ったところ、H-BEAでγ-Al_2O_3と同程度のTHF転化率97.52%、高いPRL選択率64.52%を得た。また原料の拡散のために0.76nm程度の細孔径が必要であり、L酸点が重要な因子であると予想できた。これらを踏まえ、副生成物の詳細な解析や、最適な触媒調整を行い、PRL選択率向上及び一段階合成への応用を検討していく。
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