研究概要 |
著者らは,外部反射(ER)及び部分内部反射(PIR)を含む部分反射分光法のためのその場測定装置を開発することにより,不活性有機溶媒/無機酸(HX)水溶液界面における親油性ポルフィリン(H_2P)のプロトン化体(H_4PX_2)の界面吸着状態を研究した. 1.会合形(H_4PX_2)_<n.i>における酸型テトラフェニルポルフィリンの化学量論的解析は溶液セルとプリズムから成る簡易装置を用いて達成された.(1)トルエン-4 M H_2SO_4系ではER分光法が界面吸着体と有機相の親油性溶質(H_2P)_oを区別するのに効果的であった.(2)ドデカン-4 M H_2SO_4系では全(H_2P)_oがプロトン化して(H_4PX_2)_<n.i>と水溶性化学種H_4P^<2+>_<aq>を生じた.界面分子密度[H_4PX_2]_iに対する各バンドの反射吸光度の関係は,界面吸着状態が単層から異なる反射係数をもつ多層への変化を示唆した.(3)ドデカン-4 M H_2SO_4系における飽和界面分子密度は1.20×10^<-10>mol cm^<-2>と見積られ,ピロール環の界面法線からの傾斜角は47°と算出された. 2.メソ-フェニルグループにオルト-位置換基を持つ親油性テトラフェニルポルフィリン誘導体では会合体が見られなかった.酸型のテトラ-p-トルイルポルフィリンは幾つかの会合体を形成した.分子会合はフェニルグループが回転して平面型分子構造となる性質に依存することを示唆している. 3.試作の角度可変装置を用いて反射スペクトルの角度依存性を検討した.p-偏光PIRスペクトル中に正と負のバンドが,p-偏光ERスペクトルのバンドに対応しつつ逆符号で観測された.これらのことは,p-PIR分光法の界面選択則がp-ER分光法のそれとは逆のルールを有し,PIR分光法もまた分子配向の解析に用い得ることを示唆する.
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