研究概要 |
本研究は,色素の色変化に基づく多チャンネル型匂いセンシングシステムを構築することを目的としている。 基礎的知見を得るために,試料ガスとの接触によって色変化を起こす色素として,5,10,15,20-テトラフェニル-21H,23H-ポルフィンとそのCu(II),Zn(II),Mn(II),Co(II),Fe(II)錯体,Reichardtベタイン色素,pH指示薬(フェノールフタレイン,メチルレッド,メチルオレンジ,フェノールレッド,チモールブルー,アリザリンイエロー)および電荷移動錯体の電子受容体を用い,これらの応答色素を逆相TLCプレートやシリカゲルTLCプレートに吸着させ応答素子群を構成した。その素子群を水蒸気発生のための電子レンジパーツを有するシステムに組み込んだ。スキャナーで取得した素子群の画像の解析によって応答量パターンを得た。まず各種の揮発性有機化合物(アルコール類,ケトン類,ハロゲン化アルキル類,芳香族化合物等)を使って,この素子群のガスセンシング特性を調べ,その結果は,提案したシステムが大量の水蒸気の存在下でもガス検出機能を有し,多くの対象試料に前処理なしで適用可能であることを示唆した。次いで,検討した応答色素のうちpH指示薬だけを用いても,柑橘類(カボス,レモン,ネーブル,グレープフルーツ)やコーヒー(各種のレギュラーコーヒーや砂糖入り缶コーヒー,ブラック缶コーヒー)の種類の識別が可能であることを主成分分析で確認した。また,種々のpH指示薬を含むポリビニルピロリドン膜を光ファイバのクラッド部に製膜し,得られた反射型の感応色素付与光ファイバの応答特性も調べた。アリザリンイエロー/ポリビニルピロリドン膜の膜厚を9μmに調製した光ファイバを測定に用いると柑橘類の主要匂い成分への応答が顕著に現れることも重要な知見として得た。
|