研究概要 |
本研究は、金(I)イオンの錯化剤として亜硫酸イオン(SO_3^<2->)・チオ硫酸イオン、還元剤にチオ尿素(TU)、ヒドロキノン(HQ)を含む金めっき液をベースに、めっき反応に伴ってめっき液中に蓄積する物質や外部から補給すべき物質が少ない長期間持続的に使用可能な金めっき反応系構築を目標に行い、下記の知見が得られた。 (1)めっき反応進行中、HQが酸化されて生じたベンゾキノンとSO_3^<2->の反応からヒドロキノンスルホン酸(HQSA)が、さらに同様の反応を経てHQSAからスルホン酸基を2個以上持つHQ誘導体が生成することがわかった。HQ,HQSAともにTU再生能力を持つ。 (2)TUは金(I)錯体の還元反応を促進することを見出した。この促進効果はグラッシーカーボン(GC)電極では認められず、金電極表面でのみ観測された。 (3)電気化学還元によってHQSAからHQを再生する方法について検討した。水溶液中では金,GC,白金,金アマルガム電極のいずれにおいても、電位窓の範囲内で還元反応が起こらなかった。多くの有機溶媒に対してHQSAは溶解性が低く、溶解したDMSO、DMF中でも電気化学的脱スルホン化は認められなかった。 (4)Au(I)錯体のめっき液への補給は[Au(SO_3^<2->)_2]^<3->の形で行なうのが適当と考えられた。補給によってめっき液中のフリーのSO_3^<2->濃度が増加するが、Au(I)錯体の還元反応に与える影響が少ないことが電気化学測定からわかった。 (5)HQSAの電解還元に代わる持続使用可能な金めっき反応系へのアプローチとして、めっき反応によって酸化還元だけを繰り返すHQ誘導体を使う方法を考えた。このために必要な"チイルラジカルを還元してTUを再生でき"かつ"付加反応を伴わずにSO_3^<2->による還元を受け得る"可能性のある物質として、メチル基とスルホン酸基を2個ずつ持つHQ誘導体を提案した。 今後は、上記(5)の可能性を検討すると同時に、めっき皮膜の物性など実用上必要な知見や技術を蓄積することで、表記金めっき反応系を実現させたい。
|