研究概要 |
本研究は,次世代リチウム二次電池用の負極材料として「リチウム貯蔵性金属間化合物」の可能性を検討したものである.得られた知見を総括すると以下の通りである. 1.Mg_2Ge電極の充放電反応は,リチウムが格子間に可逆的に侵入脱離する機構である可能性がある.しかしながら,リチウムの占有位置などの構造的知見は得られていないため、それらの解明を試みた.充電(リチウム挿入)前後のX線回折および中性子弾性散乱実験の結果より,挿入されたリチウムはMg_2Ge格子間に固溶していることが明らかにされた.したがって、この電極の充放電反応機構は、これまでに報告されているような置換反応や相変化に基づくものではないことが示された。 2.メカニカルアロイング(MA)で合成した立方晶および斜方晶のMg_2Snについて,結晶系の違いが電極特性におよぼす効果について調べた.初期充放電サイクルにおける容量可逆性については,斜方晶Mg_2Sn電極のそれは,合金系で最も良いとされているSn_2FeやNi_3Sn_2電極の値に匹敵するものであることがわかった.また,実用化されているグラファイト電極と比較すると,放電容量が上回っていることが示された.X線回折より,Mg_2Sn電極の充放電反応機構が主としてLiとSnとの合金化-脱合金化であることが示唆された.ただし,リチウムは,はじめにMg_2Snの結晶格子間隙に取り込まれ,その後スズと反応することで化合物の分解が起きるものと推察される. 3.異なる内部エネルギーを有するリチウム貯蔵性金属間化合物AlSbをMA法により合成した.X線回折より,充電時にリチウムはAlSb格子間に吸蔵され,リチウム固溶体を形成していることが示された. 4.MA法により合成されたMg_3Sb_2およびLiMgSbは,導電材や結着剤を用いることなく,電気化学的にリチウムを挿入-脱離することが示された.これらの化合物からなる電極の初期放電容量は約600mA h g^<-1>であり,高容量リチウム二次電池負極としての潜在能力の高さが示された.Mg_3Sb_2電極に関しては,その体積あたりの放電容量は2400 mA h cm^<-3>と見積もられ,グラファイト電極の約3倍に相当する大きな値が得られた.X線回折の結果は,充電過程でMg_3Sb_2がリチウムと反応しLiMgSbを形成することを示した。Mg_3Sb_2電極の充放電サイクル特性は乏しいものであったが,合金合成時にリチウムを添加した電極(LiMgSb電極)で,サイクル特性の著しい改善が認められた.
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