研究概要 |
天然環状過酸化物であるアルテミシニンが多剤耐性マラリアに著効を示すことから、その基本骨格である1,2,4-トリオキサンをはじめとする種々の環状過酸化物の新規合成法が開発され、改めてそれらの薬理活性に関心が寄せられている。本研究は、中員環過酸化物の合成で培ってきた独自の手法を発展させ、その合成例が極めて少ない11員環以上の大環状過酸化物の汎用性の高い合成法を確立するとともに、その薬理活性を明らかにすることを目的とした。その出発原料は不飽和ヒドロペルオキシドであるが、ビスヒドロペルオキシドのモノアルキル化あるいはジニンの選択的酸化法を開発することにより、様々な骨格を持つものの合成に成功している。次いで、^+I(collidine)_2PF_6^-(BCIH)をプロモーターとする環化により、11員環から20員環までの大環状過酸化物が高収率で得られることを見出した。この方法論は、分子内にペルオキシ結合を持つ不飽和アルコールの環化にも有効であり、最大19員環の環状過酸化物の合成に成功している。また、不飽和ヒドロペルオキシドのトリフルオロエタノール中でのオゾン化により、13員環までの大員環過酸化物の合成が達成された。これは中間体カルボニルオキシドのヒドロペルオキシドによる分子内捕獲を利用するという、全く新規な方法である。このようにして得られた一連の大環状過酸化物について、抗がん、抗マラリア、抗菌活性等を検討し、薬理効果の顕著な骨格を特定中である。
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