研究概要 |
本研究では,内部オレフィンから液/液二相系ヒドロホルミル化反応により選択性よく直鎖アルデヒドを得るための新規水溶性ジホスフィン配位子を開発することを目的とした。標的化合物のジホスフィン配位子は,キサンテン骨格を基本構造とする水溶性ジホスフィン配位子で,例えば,4,5-ビス{[p-(p-メトキシフェニル)フェニルエチル]フェニルホスフィノ}-9,9-ジメチルキサンテンのスルホン化により得られる化合物である。この構造の特徴は,ミセルを形成せずに水に溶解し,液/液界面で基質と相互作用できるようにデザインした点にある。さらに,そのリン原子には異なる3種類の置換基が結合することになり,キラリティーを有する。平成13年度はホスフィンの導入反応を中心に試みた。まず,4,5-ジリチオ-9,9-ジメチルキサンテンを発生させ,これとジエチルアミノジクロロホスフィンなどの各種ホスフィンとの求核置換反応を鍵反応として数種のホスフィン中間体を合成したが,何れも酸素や湿気に敏感なため収率良く単離することが出来なかった。そこで平成14年度は,最近頻繁に用いられるようになったホスフィン・ボラン錯体としてホスフィン配位子を安定化させる手法を採用して新たな合成ルートの検討を行い,幾つかの貴重な知見を得た。例えば,中間体の一つの候補として4,5-ビス(ボラナト-tert-ブチルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテンを合成し,メソ体とラセミ体の分割単離に成功した。しかし,キサンテン骨格特有の立体障害のため,ボラン錯体を中間体とするルートは有効でないことが明らかとなった。そこで次に,4,5-ビス(クロロフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテンを経由するワンポット反応を種々の条件で試み,最終的に標的化合物の単離に成功した。今後,前駆体に水溶性を付与し,この配位子を用いた金属錯体を触媒として水相/有機相二相系でのヒドロホルミル化反応に取り組み,当初の目的を達成する予定である。
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