研究概要 |
1.カルボニル化合物とケテンの[2+2]付加環化反応 種々のカチオン性8-10族遷移金属錯体を触媒として[2+2]付加環化反応を試み,パラジウムおよび白金錯体が高い活性を示すことを見出した。また,触媒活性は,中心金属や配位子のみならず,対アニオンの種類に著しく依存するという興味ある知見を得た。種々のキラルな配位子を有するパラジウム錯体を用いて不斉[2+2]付加環化反応を試みたが,不斉選択性は得られなかった。しかし,キラルなBINOL誘導体のテトラアルコキシボレートを対アニオンとするパラジウム錯体を用いると,不斉選択性が得られた。 2.α,β-不飽和カルボニル化合物とケテンのタンデム[2+2]付加環化-アリル転位反応 α,β-不飽和アルデヒドとケテンの反応では,[2+2]付加環化によって生成するβ-ラクトンが系内でナリル転位しδ-ラクトンが生成する場合がある。そこで,種々のα,β-不飽和アルデヒドおよびケトンとケテンの反応を行い,その条件を調べた。その結果,4-位またはビニル置換基の2-位にアルキル基を有する4-ビニルオキセタン-2-オンが付加環化によって生じる場合に,アリル転位-反応が起こることを見出した。また,双性イオンを中間体とするアリル転位の反応機構を提案した。また,γ-位に不斉中心を有する種々のキラルなα,β-不飽和アルデヒドとケテンのジアステレオ選択的タンデム[2+2]付加環化-アリル転位反応を検討し,57%deの選択性を得た。 3.ルイス酸による二酸化炭素の活性化と炭素一炭素二重結合への固定化 本研究の展開として,β-ラクトン類をオレフィンと二酸化炭素から合成する新たな反応を開拓することを目的として,ルイス酸により二酸化炭素を活性化し,芳香族化合物,有機シランに求電子的に置換する反応の可能性について検討し,対応するカルボン酸を得た。
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