研究課題/領域番号 |
13650916
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
合成化学
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
小川 昭二郎 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化研究所, 教授 (20013196)
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研究期間 (年度) |
2001 – 2002
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研究課題ステータス |
完了 (2002年度)
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配分額 *注記 |
3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
2002年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2001年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
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キーワード | 大環状化合物 / 1,10-フェナントロリン / 液膜輸送 / カラースイッチング / リチウム / カラースウィッチング / 分子軌道 / 互変異性 / 海水 |
研究概要 |
我々はすでに新規に合成したピリジンを含むポルフィリン類似大環状化合物の亜鉛錯体が溶媒の極性を変えることにより共役系が変化し、溶液が無色から黄色、さらに赤色に変わること、すなわち溶媒の極性によるカラースイッチング機能を見出している。本研究では、その変色機構を解明するためにまず配位子の^1H-NMRスペクトルを調べたところ、スペクトルが溶媒の極性により大きく変化することを見出した。各プロトンの化学シフトを詳細に検討し、溶媒の極性により、分子のコンホメーションが変化し、その結果、共役系が変わり吸収スペクトルが変化することがわかった。これらについては、分子軌道法計算による理論的裏づけを行った。また、これまで亜鉛錯体でカラースイッチング効果を見出していたが、リチウム錯体においても同様に溶媒により色が可逆的に変化することがわかった。非極性溶媒中では、大環状化合物環内の水素が分子周辺に移動し共役系を減少させるために無色となるが、極性溶媒中では、環内水素がリチウムイオンと交換して電子の非局在化が促進され、深赤色となることがわかった。さらに、無色のリチウム錯体の分子周辺に移動した水素の化学シフトに大きな対アニオン効果が見られ、中心リチウムイオンと対アニオンとの間の距離と対応付けた。これらの性質は、本大環状化合物が平面構造と非平面構造の両方を持つ歪がかかったハイブリッド構造であること、環の内部に動きやすい水素をもち、この水素の位置により共役構造が変化することから生じるものであり、これまでにない新しい考え方によるといえる。また、光照射によっても内部水素が移動し色が変わることがわかったので、今後、光により色および錯体形成能が変わる新しい配位子の合成を行う予定である。 本大環状化合物をキャリヤとして液膜輸送を行い、海水と同組成の塩溶液からリチウムイオンを高選択的に分離することが可能であることを見出した。今回さらに大環状構造ではない1,10-フェナントロリンの種々の2,9-ジ置換体の合成を行い輸送用キャリヤとしての評価を行った。その結果、カルボニル基をもつ置換基を有する誘導体はリチウムイオンと1:1錯体を作るが、カルボニル基を持たないものは2:1錯体を作ることを見出した。輸送用キャリヤとして用いた場合、後者は輸送速度において優れているが、前者はリチウムイオン選択性において優れていることがわかった。 今後、さらに光感受性等の新しい機能をもつ大環状キャリヤの開発を行うとともに、主としてリチウムイオン分離システムを開発し、リチウムイオン電池等のエネルギーシステムへの寄与を図ることを計画している。
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