研究概要 |
本研究では,精密有機合成化学に寄与し得る高機能性Pd/Cu触媒の開発を行い,アリルアルコール類のビニルエーテル体へのオキシパラジウム化過程と,それに続く分子内環化の高度制御を行い,キラルな含酸素複素環化合物の合成を行うことを目的とした.シンナミルアルコール類とビニルエチルエーテルとの反応から生成する環化生成物のX-線単結晶解析を行ったところ,5員環のジヒドロフラン誘導体が生成していることが判明した.また,カテコールを組み込んだ触媒系(Pd(OAc)_2/Cu(OAc)_2/カテコール)がアルケンへのオキシパラジウム化過程を含む反応の触媒化に効果的であることを見出した.このことは,この触媒化に重要な役割を演じる酸素分子がカテコール-銅錯体によって活性化される効果的なシステムが構成されることに起因すると考えられる.この点を,住友化学工業(株)製の計算化学ソフト"LUMMOXTM"を用いて検証した.この触媒系を用いれば,アリルアルコール自身とビニルエーテルからエキソメチレンテトラヒドロフラン体が80%以上の収率で得られた.続いて,シンナミルアルコールとエチルビニルエーテルとの不斉反応による光学活性ジヒドロピラン体の合成を検討した.非極性溶媒であるトルエンを用い,キラル配位子として市販の2,2'-ビス[(4S)-4-ベンジル-2-オキサゾリジン]を採用したところ,42%eeのエナンチオ区別性を実現することができた.
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