研究概要 |
環境問題の高まりを受け,安全でシンプルなモノマーから用途にあったさまざまな高分子を合成することが求められている。本研究は,最も単純なオレフィンおよび共役ジエンであるエチレン(E)と1,3-ブタジエン(Bd)の共重合触媒を開発することにより,新規な炭化水素系ポリマーを創製しようとするものである。まず,チタン系化合物についてE-Bd共重合能について詳細に検討した結果,(η^5-シクロペンタジエニル)チタニウムトリクロリドをシリカ上に担持した触媒をトリアルキルアルミニウムとトリフェニルメチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレートの混合物(I)で活性化した系が40℃では80%,0℃では99%以上の選択率で,Bd含率0.5〜2.5モル%の共重合体を与えることを見出した。共重合中のBd単位はトランス-1,4-付加構造であり,この二重結合部分を過マンガン酸カリウムにより選択的に酸化分解することにより,両末端にカルボキシル基を有する分子量分布が約2のポリエチレンが得られた。ついで,さまざまなジルコノセン錯体をIで活性化した触媒系により40℃で共重合を行った結果,C_<2v>対称の架橋および非架橋型錯体ではまったくポリマーが生成しないのに対し,C_sおよびC_2対称の架橋型錯体を用いると90%以上の選択率でE-Bd共重合体が得られた。特にジフェニルメチレン架橋(η^5-シクロペンタジエニル)(η^5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド(II)を用い0℃で重合を行うとほぼ選択的に共重合体が生成した。生成共重合体はエチレン連鎖中に約8モル%のトランス-1,4-付加構造と約20モル%のシクロペンタン環を有するE-Bd-シクロペンテン三元共重合体と類似の構造であった.重合活性ならびにBd含率は錯体の構造に依存し,II>その他のC_s対称性錯体>C_2対称性錯体の順に低下した.ついでエチレン重合に高活性を示すビスイミノピリジン配位子を有する二塩化コバルトとメチルアルミノキサン(MAO)からなる系によりE-Bd共重合を検討した。Bdの添加に伴い重合活性は大きく低下し,共重合体は得られなかったが,塩化コバルト-MAOという非常に単純な触媒系が0℃においてBdのリビング重合を高cis-1,4選択的(>99%)に進行させることを見出した。
|