研究概要 |
高度情報化に向けて,1分子で情報処理可能な"分子ナノデバイス"に関心が集まっている。分子デバイスが構築できれば,より高密度な集積媒体や高速の演算処理が可能な究極の"分子素子"ができるものと期待されている。そのような分子デバイスを構築する1つの方法は,精密に合成された分子1つを操作して,組織化したり,組み立てたり,切り離したりすることである。本研究では,高分子1分子をマニュピレーションする方法として,SFM(Scanning Force Microscope)法を用いて,意のままに配列・制御し,ナノ分子組織体を構築するための基礎的な知見を得ることを目的として,以下のような研究を行った。 (1)ポリエチレンオキシド(PEO)およびポリメタクリル酸,ポリアクリル酸の末端に,p-スチリルアルキル着,メタクリルロイルオキシアルキル基等の疎水性の重合官能基を導入したマクロモノマーをアニオンリビング重合法等によって合成し,水中ミセル重合することによって高重合度の櫛型高分子を合成した。 (2)両親媒性櫛型高分子の分子量と回転半径を種々の媒体中で光散乱およびSAXS測定することによって特性化した。得られた結果は,ミミズ鎖モデルと準2定数理論を適用して,分子モデルパラメーターを決定した。電荷を有する櫛形高分子を新たに合成,静電的相互作用の高分子鎖の形態に及ぼす効果についても詳しく研究を行った。 (3)上記で合成した櫛型高分子をマイカ表面にスピンコートし,SFM観察するための条件の確立を行った。 (4)マクロモノマーを用いた分散・乳化重合に関して,生成する微粒子系制御に関する系統的な研究を行うとともに,理論の構築を行った。 (5)高分子微粒子の自己組織化膜に関する研究を行い,自己組織化に関する基礎的知見を明らかにした。 (6)主鎖に導電性を有する櫛型高分子を新たに合成し,光散乱、小角X-線散乱および蛍光測定を行い,1分子被服導線となることを明らかにした。
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