研究概要 |
高分子ブレンドのモルフォロジーと物性の相関を系統的に理解することを目的とし、いくつかの相分離系、および、各成分が均一に混合した、相溶ブレンドの誘電緩和測定を行った。具体的には、(1) Polystyrene / Poly(vinyl methyl ether) (PS/PVME), (2) Polyisoprene / Poly(vinyl ethylene), (3) Poly(vinyl acetate) / Poly(ethylene oxide), (4) Polystyrene / 4-cyano,4'-alkyl biphenylについて、検討した。これらのブレンドは成分間のガラス転移温度(Tg)に大きな差があるという特徴を持つ。一相状態のダイナミックスを全ての系について詳しく調べた結果、系(3)を除いて、動的不均一性が発現することがわかった。 PS/PVMEブレンドについて、一相状態から温度ジャンプにより相分離を誘発し、誘電緩和測定を時系列で行った。結果、PSのセグメント運動に対応するα緩和が、温度ジャンプ直後から低周波数側にシフトし、その後徐々にピークの高さが上昇した。ピークの低周波シフトについては、相分離によるPS濃度の上昇により、摩擦係数が増加したためと考えられる。また、ピーク高さの上昇については、界面領域に存在するPSの割合が減少するとともに、ドメイン内部の割合(αピークは、ドメイン内部に存在する遅いほうの成分からの応答であると仮定する)が増加する事が原因であろう。PS/4-cyano,4'-pentylbiphenylブレンド(上限臨界共溶温度を持つ)を温度クエンチさせ、等方相/ネマチック液晶相に相分離させた。その相分離系の誘電測定から、新しい(各成分に固有の緩和では説明不可能な)緩和過程の出現を見いだし、これがMaxwell-Wagner効果によると結論付けた。
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