研究概要 |
本研究は,境界層遷移や境界層の再層流化に関する基礎研究であり,内容は2つに大別される.一つは,境界層吸込み後の準層流の再遷移であり,他方は壁乱流の生成維持の鍵を握る壁近傍ストリーク構造の不安定である.それぞれについて主な成果を以下にまとめる. 乱流境界層に局所的に壁面から吸込みを行えば壁近くのストリーク構造が消失し,吸込み領域下流では新たに層流境界層が発達する.吸込み領域下流では残留乱流渦は下流に減衰してゆくが,その過程で流れ方向に長く伸びた低速ストリークが代数的過渡増幅を受ける.発生する低速ストリークの間隔は,吸込み強さに関わらず元の乱流境界層のストリーク間隔と大きな違いは無く,同じスケールのストリーク構造が再生成されるという興味ある結果が得られた.ただし,ストリーク構造の成長は,レイノルズ数に依存し,ある敷居値以下のレイノルズ数(運動量厚さに基づくレイノルズ数で200以下)では低速ストリークが十分発達する前に撹乱源である残留乱流渦(縦渦)の減衰が進みストリーク不安定が起きず再生成過程は中断する. ストリーク不安定に関する研究では,層流境界層中に編み変の抵抗を利用して人工的に周期低速ストリークを生成し,まず低速ストリークの線形不安定特性が調べられた.次に,ストリーク不安定の始まりから壁乱流を支配する縦渦が生れ,さらに壁乱流の壁法則が現れるまでを追跡した.ストリーク不安定による低速ストリークの崩壊が進んだ段階になると平均速度場も壁乱流の壁法則へ近づくことが明らかにされた.
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