光透過法による粒子濃度測定はディーゼル排気中の微粒子を直接測定できる方法として有効である。本方法において紫外線を用いた粒子濃度測定装置を開発した。粒子による光減衰係数値は可視域よりも紫外域で高いことから、測定部の小型化、感度の向上および低濃度(実験機関のディーゼル排気で約0.03g/m3(0.1g/kWh)とされる)までの測定を可能とする改善が行えた。ディーゼル排気粒子として観測される約10nmから300nmまでの粒子径および光学定数を用いて光散乱理論による粒子の光減衰係数を算出し、可視から紫外線領域までの光減衰係数を求めた。50nmおよび155nmのポリスチレン標準粒子による光透過率を紫外線吸収分光器により測定し、ディーゼル排気粒子の濃度測定で必要とされる透過率および測定部の光路長を検討した。測定装置の光源には高圧水銀ランプを用い、受光部には小型の光センサーを用いた光学系を組立て、パソコンによるリアルタイムのデータ処理を含めた装置を製作した。同装置によりディーゼル排気粒子の吸収スペクトル特性を明らかにし、最終的には光学フィルターで水銀ランプの365nmの紫外線を測定波長として選択した。数密度による絶対濃度値の算出には光透過率からLambert-Beerの法則を適用して求める。本装置による粒子濃度とフィルター重量測定法による結果とを比較して定性的に妥当な一致を得た。なお設計上、測定部では水分、未燃成分、潤滑油分の凝縮が起こらないように配慮する必要があった。今後は、舶用ディーゼル粒子の物性や測定条件との対応を十分に行い、船舶のディーゼル排気粒子の環境問題対策において、本装置による実測データの蓄積や実用的な測定装置の設計指標を確立させるものである。
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