研究概要 |
旧USBMの鉱山コストデータベースに基づき,各鉱山の鉱床位置,採鉱法,生産規模などの条件から採鉱部門と選鉱部門における使用機材及び消耗品のコストを推定し,その鉱山の立地する地域の物価などからそれらを量に換算し,その鉱山の生産金属あたりCO_2排出源単位を計算するデータベースを作成した.そのアプリケーションを用いて,我が国の銅及び亜鉛製錬所の主要精鉱輸入元である各鉱山のCO_2排出原単位を求め,日本で製錬される銅と亜鉛の全製造工程でのCO_2排出原単位を推定した.まず,銅に関しては,主要7鉱山から産出される銅のCO_2排出原単位の金属量加重平均は2.063kg-CO_2/kgである.これら7つの鉱山で日本の製錬金属量の3分の2以上を占めており,およそ2kg-CO_2/kg程度が日本の銅の製造にかかる排出原単位であると考えられる.亜鉛に関しては,主要9鉱山のうち4鉱山のデータしか得られなかったが,最も排出原単位の大きいMt.Isaに関しても日本の製錬工程での排出がライフサイクルでの排出のほぼ半分以上を占めており,鉱山ごとの違いよりも製錬技術の差によって排出量が大きく変わるということが予想される.さらに,各鉱山における資源生産コストとCO_2排出原単位との比較検討を行った.資源生産コストとCO_2排出原単位とは必ずしも比例しておらず,CO_2排出1kgあたり30セントの炭素税がかかり,それをすべて鉱山会社の負担とすると,コストは銅に関する7つの鉱山中4つの鉱山でほぼ同じとなる.これは,炭素税などを導入することによるコストを逆転させることで,環境負荷の少ない資源を優先的に使うインセンティブをもたらす可能性があることを示すものである.
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