研究概要 |
静的破砕剤の岩石破砕機構を明らかにするため,平成13年度は1辺20cmの立方体モルタル供試体を用い,供試体の中央に穿孔した直径5cmのボーリング孔に静的破砕剤を充填して水を加え,供試体を破砕する実験を行った.その結果,巨視的亀裂発生直前のAE震源は供試体外側に集中し,亀裂は供試体外側で発生し破砕孔に向かって進展する傾向がみられた. 供試体の破砕は膨張圧により生じ亀裂は破砕孔から進展すると予想していたため,平成13年の結果は供試体が破砕孔の直径に比べて小さすぎるためではないかと考えた.そこで,平成14年度は1辺30cmの供試体を用いて実験を行ったが,実験結果は平成13年度と変わらなかった. 静的破砕剤は,CaO+H_2O=Ca(OH)_2の化学式で表される水和反応に伴う体積膨張によって材料を破砕するもの理解されているが,反応に伴い熱も発生する.実験結果が示す供試体外側からの亀裂の進展は熱応力の影響と考えられるが,静的破砕剤の破砕効果として熱応力の影響に着目した研究はいままでほとんど発表されていない.そこで,さらに十分な検討を行って,熱応力の影響を確認しておく必要があると考えた. 平成13,14年度の実験では,15分程度の短い時間に反応が完了し比較的高い温度となる速効性の静的破砕材を用いて実験を行ったが,平成15度は,反応に12時間程度を要し温度の上昇も低い遅効性破砕材を用い,熱応力の発生が抑えられ,主に膨張圧が作用する状態で破砕実験を行った.その結果,破砕孔周辺にAE震源が集中し,破砕孔から最小抵抗線の方向に亀裂が進展する傾向が見られた.従って,速効性の場合は熱応力の影響が顕著であるが,遅効性の場合は熱応力の影響が乏しいことが確認できた.このことから,速効性破砕材を用いる場合には,破砕設計において熱応力を考慮する必要のあることが明確になった.
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