研究概要 |
コムギの春播性に関与する4種類の春播性遺伝子(Vrn-A1,Vrn2,Vrn-D1,Vrn4)について,選抜DNAマーカーを開発することができた.詳細は下記の通りである. Vrn-A1;RFLP遺伝子座Xwg908のCAPSマーカーとVrn-A1と連鎖(12.8cM)を確認した. Vrn2;RFLP遺伝子座Xwg644-5BのdCAPSマーカー,SSR遺伝子座Xgwm408及びXgwm604がVrn2遺伝子と連鎖することを明らかにし,4遺伝子座を以下のように位置付けた.Vrn2-1.6cM-Xwg644-2.5cM-Xgwm408-13.8cM-Xgwm604.この結果,Vrn2が5B染色体に座乗することが明らかとなり,Vrn-B1と命名することを提案した.Xgwm408については,日本の品種とVrn-B1型の外国品種との間で明瞭な多型が認められたので,Vrn-B1遺伝子の選抜マーカーとして有効である. Vrn-D1;SSR遺伝子座Xgwm212,Xgwm292がそれぞれVrn-D1と4.6cM,7.4cMで連鎖することを明らかにした.特に後者については,日本の早生品種間でも214-222bpの間で多様な変異が存在することから,わが国の春播型・秋播型早生コムギ育種のための選抜マーカーとして有用である. Vrn4;5D染色体のSSR遺伝子座Xgwm190,Xgdm3,Xgwm292を解析し,Vrn4とXgdm3が4.5cMで連鎖していること,そしてVrn4とXgwm292が独立なことを明らかにした.その結果,(1)Vrn4遺伝子が5D染色体に座乗すること,(2)Vrn-D1遺伝子とは独立であり,(3)5DLの基部に座乗することが明らかになり,Vrn4遺伝子が上述のVrn-1同祖遺伝子とは異なる新たな春播性遺伝子であることが判明し,Vrn-D5と命名することを提案した. また,秋播型コムギ品種間でのDH集団を用いたAFLP分析により,秋播性には3つの遺伝子(QTL)が関与すること,そのうちの一つが7D染色体短腕上に座乗することを明らかにした.さらに,Vrn-D1遺伝子が秋播性にも関与することが示唆された.
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