研究概要 |
家畜糞尿浄化プラントから排出される糞尿処理液は様々な無機成分を含むため,肥料資源として注目に値する.本研究では、牛ふん尿処理液を液肥としてトマトやイチゴ等の果菜類、あるいは葉菜類の栽培に利用することが可能であることを明らかにし、またそれらの栽培におけるシステムの検証を行った。 トマトの砂耕及び土耕隔離床栽培では、牛糞尿処理液区の生育、収量は、対照区に比べやや低かったが,尻腐れ発生率も対照区と同程度であり、栽培への利用は十分可能であった.また、牛糞尿処理液を電気分解処理した高濃度液も、無機成分補正を行うことで、トマトの栽培は可能であり,また果実サイズは小さくなるが,可溶性固形物含有率などの品質を向上させることが明らかとなった.家畜糞尿の施用効果について食品残渣等を原料とする数種堆肥と比較しながら,静岡市の基幹作物である石垣イチゴでの利用可能性について検討した結果,牛糞尿処理液,牛糞堆肥,牧草堆肥での利用可能性が示唆された. 葉菜類の栽培実験では、・栽培システムの検討、・栽培作物の検討、・培養液濃度、添加物の影響の検討を行った。牛糞尿処理液の生育阻害要因として無機組成のアンバランス、高塩類濃度に加え高pH、何らかの生育抑制物質の存在が考えられる。底面給液システム、NFT栽培において生育阻害の原因は主としてpHを低下させることで回避できることを明らかにしたが、生長抑制物質の存在についでは特定することができなかった。以上の栽培試験の結果より、生育阻害要因やその除去方法を明らかにすることで牛糞尿処理液の果菜類栽培における培養液としての利用可能性が大きく増すと考えられる。
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