研究概要 |
エンドウ根腐病菌(Nectria haematococca)の1.6-Mb CD染色体及びトウモロコシごま葉枯病菌(Cochliobolus heterostrophus)の相互転座染色体を用い,ファイバーFISH法等の技術確立とFISHによる染色体の物理的マッピングを行った。成果は次の通りである。 1.パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)用のプロトプラスト包埋アガロースブロックとPFGE分離の染色体DNAバンドからDNAファイバー標本を作製する方法を確立した。 2.ファイバーFISHの手法を確立し,エンドウ根腐病菌の1.6-Mb CD染色体についてコスミドクローンをプローブとしたcontigの作成が可能であることを示した。 3.トウモロコシごま葉枯病菌相互転座染色体の転座点近傍にあるRFLPマーカー間の物理的距離をファイバーFISHによって解析し,遺伝的地図距離と比較した。その結果,減数分裂時に転座点近傍では交叉抑制は起きていないこと,従来予測されていた転座点近傍への大きい断片の挿入の可能性は低いこと等を明らかにした。 4.間期核を用いたFISHによる物理的マッピングの可能性について,エンドウ根腐病菌のコスミド及びプラスミドクローンをプローブに用いて検討した。いずれのプローブでもシグナルは検出されたが,ファイバーFISHに比べマッピングの解像度は劣った。なお,間期核内でのCD染色体の挙動やテリトリーの解析は可能と考えられた。 5.トウモロコシごま葉枯病菌の前中期〜中期染色体に対する2色FISHを行いT-toxin生合成遺伝子PKS1とDEK1がそれぞれ異なる染色体上に座乗すること,第6と第12染色体間の相互転座を細胞学的に証明した。
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