研究概要 |
ブルーム型台木カボチャ(新土佐2号)およびササゲを用い,ケイ素がマンガン耐性を向上させるメカニズムについて検討した. ブルーム型台木カボチャの場合,ケイ素の施用によって葉の全マンガン濃度は低下しないにもかかわらず,アポプラスト溶液のマンガン含量は,ケイ素を与えなかった場合の約10%まで低下し,マンガン過剰症は完全に抑制された.葉の細胞壁画分中のマンガンを,交換態,マンガン酸化物,残さの各画分に連続的に分画したところ,ケイ素施用区の場合,マンガン過剰処理2日後では交換態含量が,4日後ではマンガン酸化物含量が,ケイ素無施用区よりも有意に高くなる結果が得られた.また,処理4日後のヶイ素施用区では,細胞壁のセルロース画分のケイ素,マンガン含有率が,無施用区よりも有意に高かった.これらの結果から,ブルーム型台木カボチャでは,マンガンの細胞壁への結合性増大と,マンガンが酸化物の形態で細胞壁のセルロース成分へ取り込まれることによって,アポプラスト液相部分のマンガン濃度が低下し,マンガン耐性の向上に貢献していると考えられた. 一方,ササゲの場合も,ケイ素の施用は,葉の全マンガン濃度を低下させることなく過剰症を抑制した.葉アポプラスト溶液のマンガン含量は,ケイ素を与えなかった場合の約40%まで低下した.マンガン過剰条件下でケイ素施用方法を変えて栽培したササゲ葉について,マンガン過剰症発生程度とアポプラスト溶液中のケイ素濃度との関係を調べたところ,非常に高い相関性が認められたのに対し,マンガン濃度との間には有意な相関関係は認められなかったこのことから,ケイ素は,ササゲ葉アポプラスト内のマンガン濃度を低下させる効果があるものの,アポプラスト溶液中の遊離ケイ素もマンガン耐性向上に重要な役割を果たしていると考えられた.
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