研究概要 |
ポリオレフィン系樹脂被覆肥料LPコートの被覆材には光分解性ポリエチレンが用いられている。本研究では,2種類の畑土壌における光分解性ポリエチレンの光分解生成物に対する生分解性をBOD法によって調査した。21日間の生分解性試験の結果,光分解生成物が高分子の状態ではほとんど生分解が認められなかった。しかし,光分解生成物からヘキサンによって抽出した低分子量画分については,21日間で8%から18%の生分解度が得られた。また,2種の土壌間では,その生分解性のパターンが異なっていた。これは,光分解生成物を資化する微生物の種類や菌数が両土壌間で異なることを示している。以上の結果から,供試した畑土壌中には,低分子量化した光分解性ポリエチレンの光分解生成物(長鎖n-alkane)を分解・資化する微生物の存在が示唆された。 Alkaneを分解して利用する微生物は自然界に広く分布しており,さなざまな場所からAlkane分解菌が分離されている。しかし,酸性土壌において長鎖n-alkaneを資化する微生物は,これまでに報告されていない。そこで,強酸性を示す茶園土壌(pH3.2)を供試土壌として用いて,酸性土壌中において長鎖n-alkaneを資化する微生物の探索・同定を行った。集積培養を行った結果,長鎖n-alkaneを資化する細菌は検出されなかったが,長鎖n-alkane資化能を持った糸状菌(菌類)が得られた。これらの糸状菌は,SSU rDNA配列による系統解析によりCordyceps sp.およびMortierella sp.であることが推定された。
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