現代農業は大量の化学窒素肥料に依存しており、このことが化石燃料の大量消費、環境の富栄養化、温暖化の促進などという地球環境へかける負荷につながっている。そこで、この体質を改善するために世界的に見直されているのが、生物窒素固定を活用して必要な窒素源を現場で供給していくことである。本研究で対象とするスフィンゴモナス属窒素固定細菌は当初イネ根圏から分離されたものであるが、その後、スフィンゴモナス属細菌はイネの葉表面や葉内部からも分離されることが明らかになったことから、本スフィンゴモナス属窒素固定細菌は根圏と植物体内部の両面からイネに窒素を与える効率的な生物窒素肥料になりうる菌であると考えられる。 当研究室で保有する窒素固定細菌であるSphingomonas paucimobilis Y39は、後に同定がやり直され、現在はSphingomonas azotifigens Y39と命名されている。当初この細菌にGFP遺伝子を導入してイネ体内における本細菌の存在を確認することを目指したが、本細菌の形質転換の困難さからGFP遺伝子を導入するに至らなかった。そこで、イネ体内で窒素固定を行うあらたなスフィンゴモナス属細菌(窒素固定エンドファイト)の取得を目指して、イネの止葉からの探索をおこなったが、スフィンゴモナス属窒素固定エンドファイトの単離には至らなかった。
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