研究概要 |
1.Differential display法およびDifferential cloning法による生体防御に係わる遺伝子の検索 バクテリアを接種したエリ蚕脂肪体で特異的に誘導される遺伝子を検索し,12種のDNA断片を得た.それらをプローブとしてエリ蚕の免疫化脂肪体ライブラリーを検索し,リゾチームcDNA,3種の新規アタシンcDNAおよび2種のペプチドグリカン認識タンパク質(PGRP)cDNAをクローニングした.リゾチーム,アタシンおよびPGRPのタンパク質も単離し,その性質を明らかにした.その他のDNA断片についても塩基配列を決定たところ,新規の遺伝子断片と思われるもの数個が得られた.また,既知の遺伝子のホモログと思われるもののうち,3種については今まで生体防御に関与していると考えられていなかったものであり,昆虫の生体防御系を理解する上で重要な発見であると考えられる. 2.ペプチドグリカン結合タンパク質の単離とその性質 ペプチドグリカン(PGN)と特異的に結合するタンパク質をカイコおよびエリ蚕5令幼虫体液中で検索し,カイコから3種,エリ蚕から2種のタンパク質を単離した.カイコの一つはカイコ核多角体病ウイルス(BmNPV)増殖促進タンパク質(PP)で,PGN,キチン,LPSなどに対する結合特性をプラズモン共鳴装置並びに^<125>I-PGNを用いて測定し,その性質を明らかにした.他の二つは機能未知の30Kタンパク質および新規の37Kタンパク質で,これらのPGN並びに種々の糖に対する結合特性を明らかにした.また,エリ蚕幼虫体液から,PGRPを単離し,PGNに対する結合を直接測定し,その結合特性を初めて明らかにした.これらのことから,カイコおよびエリ蚕体液には,予想以上の多種のPGN結合タンパク質が存在することが明らかとなった.
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