研究概要 |
植物寄生性線虫(キタネグサレ線虫;Pratylencus penetras)を検定線虫として、殺線虫物質を微生物の代謝産物中に見出し、その構造を明らかにして、環境に優しい新規殺線虫剤を開発することを目的としている。目的のもとで研究を行った結果、Penicillium bilaiae Chalabudaの培養濾液から、殺線虫活性を示した化合物4種類、2,6-pyridinedicarboxylic acid,6-methoxycarbonylpicolinic acid, p-hydroxyacetophenone,新規なpratynoleneと命名した化合物を単離した。2,6-pyridinedicarboxylic acidについては、ジメチル誘導体、p-hydroxyacetophenoneについては、アセチル、メチル誘導体をつくり構造と活性について調べることにより、構造と活性との関係を明らかにした。また、新規な化合物prarynoleneは分子中に3重結合を有し、今後、この化合物をリード化合物としてより活性の強い殺線虫活性物質が見いだされることが期待できる。Penicillium cf. simplicissimummの菌体からキノリノン骨格を持った殺線虫活性物質を3種と構造の類似した化合物1種類を単離した。この結果から、キノリノン骨格の6位の水酸基、および7位の置換基が活性発現に重要であることを明らかにし、キノリノン骨格を持った種々の誘導体を合成することにより、有効な殺線虫剤の開発がかのうであることを明らかにした。また、未同定のAspergillus属菌から、殺線虫活性物質を2種と構造の類似した化合物2種類を単離した。これらの化合物は、植物毒として知られているcurvuralinの類縁体であるが、2重結合が活性を示すためには重要であることを明らかにしたが、殺線虫物質の探索に行うにあたり、他の植物に対する影響などを十分に考慮することの必要性があることをしめした。以上のような研究成果が得られ、第3回環太平洋国際農薬会議で招待講演を行う。なお、研究成果の一部は既に学術論文として公表し、また学会などで発表している。
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