研究概要 |
GABAレセプターのアンタゴニスト結合部位にAla→Ser点変異を持つイエバエOCRは,ディルドリンに対して数千倍の抵抗性を示したが,フィプロニルとEBOBに対してはこれより一桁ないし二桁低い抵抗性しか示さないことが分かった.アンタゴニスト結合部位に対する特異的リガンドである[^3H]EBOBの結合特性を解析したところ,OCRでは感受性イエバエと比較して約1.3倍の結合部位の増加と約4倍のEBOB親和性の低下が起こっていた.OCRを使った[^3H]EBOB結合阻害実験において,ディルドリンでは約45倍の活性低下が観察された.EBOBでは約6倍,フィプロニルでは約2倍の活性低下であった.フイプロニル類縁体である3,4,5-置換-1-(2,6-ジクロロ-4-トリフルオロメチルフェニル)ピラゾールは,OCRでは感受性イエバエとは異なった構造活性相関を示すことがわかった.ほとんどの化合物がOCRレセプターに対して著しい親和性低下を示したが,ピラゾール環4位に電子吸引性基がある場合に比較的高い親和性が見られた.しかしその場合でも感受性イエバエのレセプターに比べて数百分の一の親和性であった(μMオーダーのIC_<50>値).4位に臭素原子が置換している場合などはOCRレセプターで1600倍以上の親和性低下を示した.5位へのアミノ基の導入はOCRレセプターへの親和性を低下させる場合もあったが,3位にシアノ基を持つフィプロニルに酷似した構造の3類縁体の場合には,5位にアミノ基があるにもかかわらず,OCRレセプターに対して約4倍以下の親和性低下しか示さなかった.以上の結果から,ディルドリン抵抗性イエバエのGABAレセプターのアンタゴニスト結合部位は,特殊な化合物がフィットするような構造になっていると推察された.また,抵抗性発現にはリガンド親和性低下以外の因子も関わっていると考えられる.
|