研究概要 |
膜脂質の脂肪酸不飽和化酵素(Δ12ならびにω-3 fatty acid desaturase)遺伝子ならびにグルコース6リン酸脱水素酵素(G6PDH)遺伝子をリーフディスク法によりタバコに導入した. ω-3 fad導入株では10個の形質転換株を作製し,サザンブロッティング,ノーザンブロッティング,脂肪酸組成の分析を行った.それらのうち,最も脂肪酸の不飽和化が進んでいた株について耐凍性試験を行った結果,耐凍性の上昇は認められず,耐凍性向上には膜脂質不飽和化のみならず,さらに膜構造を安定化させる物質または蛋白質の発現が必要であることが示唆された. つぎに,Δ12 fad遺伝子の形質転換株8株について,サザンブロッティング,ノーザンブロッティング,および脂肪酸組成の分析を行い,最も脂肪酸の不飽和化が進んだ形質転換株を用いて,耐凍性試験を行った.その結果,形質転換株の耐凍性は,有意差は認められなかったものの,野生株と比べわずかながら上昇していることが確認された.この結果とω-3 fad形質転換株の結果を考えあわせると,18:3脂肪酸の上昇よりもむしろ18:0脂肪酸の減少が耐凍性獲得には重要である可能性が示された. つぎに,g6pdh遺伝子導入株については得られた形質転換タバコ10株についてサザンブロッティング,G6PDH活性測定および活性染色を行い,G6PDH活性の最も高かった株を用いて耐凍性試験を行った.その結果,耐凍性の向上は認められず,本遺伝子単独では耐凍性向上には不十分であることが明らかになった. つぎに,g6pdh遺伝子(プロモーターおよびターミネーター領域を含む)をクロレラの耐凍性関連遺伝子であるhiC6遺伝子と同時にタバコに導入を行った.現在,これらの形質転換株について耐凍性の評価を行っている.また,hiC6,g6pdhに加え,Δ12fad遺伝子を同時に発現させる株についても作製中である.
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