研究概要 |
カワラタケ(白色腐朽菌)を用い、窒素源を含有しない培地でポリエチレン膜を処理すると、4日間処理で伸びが約30%低下し、カワラタケでもある程度の生分解を受けることが判明した。さらに、処理4日目まではラッカーゼの産生のみしか認められなかったことから、ポリエチレン生分解へのラッカーゼの関与が示唆された。そこで、カワラタケ由来の部分精製ラッカーゼを用いてポリエチレン膜を処理したところ、3日間処理で伸びが約20%低下し、ラッカーゼによるポリエチレン生分解が実証された。 ラッカーゼ単独では非フェノール性のリグニンモデル化合物を分解できないのに対し、1-hydroxybennzotriazole (HBT)のようなメディエーターを共存させると同化合物を分解しうることが明らかになっている。そこで、HBTを共存させてポリエチレンおよびナイロン膜のラッカーゼ処理を行った。その結果、ポリエチレン膜については3日間の処理で伸びが認められなくなり、引っ張り強度も約60%低下した。また、重量平均分子量も242,000から28,300に低下し、HBTを共存させることでポリエチレンは効率的に生分解された。一方、ナイロン膜についてもHBT共存下では高度な生分解が生じ、処理2日目以降は形状が崩壊して伸びと引っ張り強度の測定は不可能となった。そこで、分子量を測定したところ、重量平均分子量は79,300から17,200に、数平均分子量は17,300から6,600に低下することが判明した。 さらに、ラッカーゼ/HBT系におけるポリエチレン分解は、メチレン基から水素が引き抜かれることを初発とする、一連のラジカル反応によるものであることが明らかとなり、本分解機構は過度の熱や紫外線照射による場合と同様であった。
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