研究概要 |
この研究では,スギ材を木材工業向けの材料としてその品質を的確に適合するために,南九州地域に生育するオビスギ群15品種を対象にして,品質のバラツキの要因になっている品種ごとの木材材質を明らかにした。そこで,得られた結果を要約すると,つぎのとおりである。 1)オビスギ15品種中,4品種材の縦圧縮ヤング率は100×10^3kg/cm^2の値を超えていた。とりわけ,チリメンドサ材の縦圧縮ヤング率は,15品種材中,最大値(132.6×10^3kg/cm^2)を示し,最小値(67.6×10^3kg/cm^2)のクロ材との間に,約2倍の開きがあった。なお,宮崎県南部地方に多く植栽されているオビアカ材は,15品種材中,縦圧縮ヤング率と縦圧縮強さともに中程度の値だった。また,2)各品種材の縦圧縮ヤング率について,髄から木部最外層に至る放射方向での力学的指標値をみると,品種ごとに特徴あるパターンが認められ,各品種材の用途を考慮する際の目安となることが示唆された。さらに,3)各品種材の縦圧縮ヤング率と,容積密度数および仮道管二次壁中層(S_2層)ミクロフィブリル傾角との間には密接な関係が存在した。つまり,容積密度数が大きいか(タノアカ,ゲンベエ),S_2層ミクロフィブリル傾角が小さいとき(ハアラ),縦圧縮ヤング率は増大し,さらに両者を兼ね備えたとき(チリメンドサ)にその値が著しく増大した。他方,小さな容積密度数と大きなS_2層ミクロフィブリル傾角をもつ品種(クロ,トサアカ,ヒダリマキ)は,縦圧縮ヤング率の値が著しく低かった。ところで,4)地上高の異なる部位で力学的指標値を比べると,多くの品種において地上高の大きな部位でその値が明らかに増大し,樹高の22%から67%付近に最大値が認められ,さらに上方では逆に減少を示した。
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