研究概要 |
漁業地域,とりわけ中小漁業地域では漁業者の高齢化や後継者不足、魚価低迷等によって地域全の将来的存続において問題を抱えている。本研究では,その対応策の検討を目的とした。 本研究では,地域が持つ自然的・社会的条件に基づく漁業生産構造を構築することによって,漁業地域の持続的発展を解明することに主眼をおいている。すなわち,地域に許容される漁業生産構造とそれを中心にした地域経済構造の解明を図る点を特徴としている。 調査は、輪島市漁協(石川県輪島市)を主な対象とし、比較対象として松前地区と戸井地区(各北海道)で調査を行った。調査項目は、(1)漁業生産構造、(2)経営実態、(3)就業構造、(4)流通構造等を主に調査した。 その結果、輸島市漁協では1)漁業経営体内に存在する主柱漁業補完システムの存在したこと、2)漁船大型化を極度に行わなかったこと、3)共同経営による零細経営体の収入確保の方策があったことが、大量の組合員が存続できた要因と考えられた。これらのことから、持続的発展を可能とする漁業生産構造を構築する際には、上層経営体に対しては、(1)各経営体を支援するためのシステムの構築(=経営組織は問わない)、下層経営体に対しては共同組織による生産基盤の確保システムの構築が重要であると把握された。今後はより具体的組織のあり方を解明することが課題である。
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