研究概要 |
近年、日本におけるウナギ資源は減少傾向にある。この研究の月的は、放流したウナギ群の生残過程、成長過程、分布過程やその他の生態的特徴に見られる個体群過程を調べることにより、ウナギ資源の回復に関する戦略と対策を議論することである。 数ヶ月間養殖されたウナギ、7977尾(00年群)の右胸鰭をハサミで切除し、2000年5月に高知県物部川に放流した。また、2001年5月には左胸鰭を切除したウナギ7989尾(01年群)を放流した。調査流域は、河口から上流の堰までの7kmであった。流域内の6地点に各3個の木製誘餌トラップを設置した。漁業者による漁獲統計も解析に利用した。2003年12月まで調査した。 2000年以降、00年群の年間漁獲尾数は、それぞれ94,46,19,21で、総漁獲尾数との割合(%)は、それぞれ8.5,7.5,2.6,2.6であった。年当たりの瞬間減少率は約0.5であった。調査流域の上流部で漁獲された全漁獲尾数割合(%)は、4年間で57.2から70.2まで変動した。しかしながら、放流ウナギだけで比べると、31.6から52.4であった。2000年のウナギの全長(cm)範囲は28.9から40.5であったが、2003年には36.4から51.3であった。この3年間の平均増加量は8.4cmであった。肥満度の変動幅は大きかったが、年々増加傾向にあった。体色の黄色化率(%)は2000年の15.7から2003年の95.0まで変化した。このことは、放流ウナギが河川において自然順化していることを意味してる。雌の割合(%)は2000年以降5.3から95.0まで増加した。01群は2003年にわずか8尾再捕されただけであった。これはウナギのサイズ(体長)に関連する漁具の限界が原因である。 以下のことが結論された。ウナギは放流された後、少なくとも4年間は河川内に生息し、生残していることが分かった。放流ウナギのおおよそ半分は自然順化することによって自然の餌をとり、成長し肥大して、体色を黄色化すると考えられる。より若いウナギを放流することによりウナギ資源の増加が期待できる。しかしながら、ウナギ資源のために好ましい河川生息環境を修復させることがより高い生残率と成長率を維持できるに違いない。
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